2009年1月19日月曜日

資本主義は嫌いですか 竹森俊平 日本経済新聞出版社 その2


第Ⅰ章 ゴーン・ウィズ・ア・バブル 1錬金術の今昔物語

フランス王立銀行総裁にして「大ペテン師」

「ミシシッピー・バブル」の舞台は1716年にフランスで設立された「ミシシッピー会社」。この会社の実質的支配権を握っていたのは、スコットランド人のジョン・ロウ。
無価値な証券「フランス国債」を人気の証券「ミシシッピー会社の株式」に転換する。これがジョン・ロウの開発した「錬金術」。「ミシシッピー会社」とは、フランスという強大な帝国そのものをM&Aによって 乗っ取るプロジェクトの「コード・ネーム」だったと考えると話が早い。ミシシッピー会社は仏領アメリカにおいて、通商権、開発権を独占し、のちに、中国貿易の権利、インド貿 易の権利、アフリカ貿易の権利を買占めた。さらに、タバコの専売権も貨幣の鋳造権も買い取った。それほどの会社の株式だから人気があり、どんどん株式を売る。その金でフランス国債を買う。逆にフランス国債でミシシッピー会社の株を買うことも認められた。
さらに、「バンク・ロワイアル」フランスの中央銀行の総裁でもあったジョン・ロウは緩和的金融政策をとることでミシシッピー会社の株式が市場で順調に消化されるのを援護した。

忍者ローンと呼ばれるサブプライム・ローン

  「サブプライム・ローン」はそれを供給する金融機関、すなわち住宅ローン業者が、半分は連邦政府の監督下に置かれていないので(半分は州政府の監督を受けている)与信管理のガイドラインに従わないため、審査基準が非常に緩い。
[No Income][No Job][No Asset]でNINJAローンとも呼ばれている。
危険な住宅ローンが罷り通る理由は、政治である。クリントン・ブッシュは低所得者が持ち家を持つことが政治的に有利だと判断した。クリントンの「規制緩和」ブッシュの「オーナーシップ・ソサエティー」とも合致した。

住宅ローンの証券化

住宅を抵当にしたローン債権を基にして証券を発行する。
住宅ローンを証券に転換するに当たり乗り越えるべき課題がある。それは「安全性」を評価すること。
安全性が統計的な期待値と乖離しないために大数の法則が発揮されるように、住宅ローンの束「プール」をつくる。プールも地域的に分散されたほうが安全性が高まる。地域間のローンの不履行率の分布が完全に相関していない限りは、地域を分散したほうが安全性は高まるからだ。しかし、本当の危険を過小評価したものに過ぎなかった。連銀の金利の引き上げや、アメリカ全体の景気が下降したり、アメリカ全体の不動産価格の下落など「全国的要因」によっては意味を持たないからだ。

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