2009年1月31日土曜日

資本主義は嫌いですか 竹森俊平 日本経済新聞出版社 その8


第Ⅰ章 ゴーン・ウィズ・ア・バブル

人々は必ずしも合理的な行動をするわけではない

「経済理論的に誤った判断」に「引っ掛かるか」を調べるアンケートの質問。
「あなたの街で住宅ブームが発生しているのは、多くの人があなたの街に住もうとするからか」
→「人が住もうとする」都市における住宅への需要は大きいから、そういう都市の住宅価格が「高水準」であることは予想される。しかし、住宅価格が上昇を続けることは予想されない。

さまざまな「きっかけ」で住宅価格が上昇する

求められる住宅価格は「個人所得」に対してだいたい決まった数倍という一定の値を取る。個人所得が毎年上昇する。住宅に対する需要も同じスピードで上昇する。
それに対して、住宅の供給(面積)は規制等によってほぼ不変である。
そのため需要増は、単に「住宅価格」の上昇を引き起こす。

なんらかの「きっかけ」が生まれ、住宅に対する需要が増加したとしよう。その結果住宅価格の上昇が起こる。その際「住宅供給の価格弾力性」が大きければ価格の上昇は小さく、「住宅供給の価格弾力性」が小さければ大幅な住宅価格上昇が必要となる。
大きな価格上昇が、住宅価格の「自己増殖的メカニズム」を引き起こす可能性をもつ。「投資意識」「価格上昇の予想」が住宅価格上昇を実現し、さらに価格上昇予想につながる連鎖反応が働く。「バブル」が生まれる。

2009年1月30日金曜日

屋上ミサイル 山下貴光 宝島社☆


今年の「このミステリーがすごい」大賞は、1作品に絞りきれず2作品の受賞となった。
そのうちの1つがこの「屋上ミサイル」。もうひとつは「臨床真理」というもの。

米軍基地がテロに占拠され、米国大統領が人質に取られる。テロリスト集団(レッドマッシュルーム)の支配下に置かれた弾道ミサイルに同盟国はおびえる。…訳の分からない恐怖のなか東京の治安も秩序も保たれなくなる。

一方、屋上部員たち(辻尾アカネ、国重嘉人、沢木淳之介、平原啓太)は屋上の平和を守るために活躍する。

喧嘩が強すぎる、行動が危なっかしい。リアリティが無いがほのぼのしている。

2009年1月29日木曜日

2009年の日本はこうなる 日下公人 WAC


「大恐慌が来る」と騒いでいるのは、狼少年の類と言われるであろう。問題なのは、アメリカ経済の信用収縮が日本にとってどこまでの大打撃になるかどうかで、それは日本の対応にかかっている。

日本外交は、「国際社会の一員として」「国際貢献」「敗戦国日本の外交」という3つの言葉を金科玉条のように使い、各論を述べる。反論しないほうが良い。反論しても通らない。ある程度は要求をのんだほうが良い、援助をもっと配ろう、孤立してはならない。のパターンである。だから駄目だ。

いま食べている量を半分に減らせば、自給率は一挙に倍の8割になる。食料自給率はカロリーで計算しているので、休耕地で野菜をいくら作っても統計にはいらない。

石油の場合、生産とは埋蔵を確認する作業のことで、汲み出すのは生産ではなく、出荷である。今確認されている埋蔵量が40年しかもたないというのは、在庫が40年分しかないと同じ意味である。

少子高齢化の対策は、結婚させること。結婚さえしてしまえば2人は生む。ただ、結婚のハードルが現代には高すぎる。だから、同棲でも結婚と同じ権利を認めること。

日本は格差社会ではない。格差とは「あちらの人間は別の人間だ」上流階級になれるとも思っていないし、なりたいとも思わない。と言うほどの差をいう。

2009年1月28日水曜日

大統領が変わると日本はどこまで変わるか? 長谷川慶太郎 トレビズ新書


アメリカはすごい国。軍事力、金融力、政治力がずば抜けて優れている。

戦場において米軍と対等に戦い、高い確率で勝利を予測できる軍隊は地球上に存在しない。
アメリカの軍事力の下での世界平和「パックス・アメリカーナ」が続く。
戦争がインフレを招き、平和がデフレを招く。

世界の貿易資金3兆5000億ドルという巨額な資金を提供できる金融センターは世界にニューヨークただひとつ。

政治は他国が真似できないほどのスピードと真剣さをもっている。政治が官僚を完全に掌握しているからできる。

2009年1月23日金曜日

資本主義は嫌いですか 竹森俊平 日本経済新聞出版社 その7


第Ⅰ部 ゴーン・ウィズ・ア・バブル

住宅を投資対象にする地域

「個人所得」という変数で「住宅価格」の動きが説明しきれない8州。その8州では「平均住宅価格」を「一人当たりの所得」で割った指標の変動が大きい。住宅価格が個人所得の動きと乖離した変動を示す場合に初めて、「住宅ローン金利」「失業率」「住宅着工件数」など他の変数が有意に働く。
住宅の供給する「サービス」だけに注目して、「投資としての性格」には配慮しないとすれば、むやみに住宅価格を競り上げるような行動をとるとは思えない。
シラーのアンケートによると「住宅を購入するに当たり、その投資としての側面を考えたか」という質問に、「それが重要な要因だった」と答えたものが、2003年(ロサンジェルス、サンフランシスコ、ボストン)で50%近辺であった。

住宅価格の上昇を期待する人々

人々の行動に「バブル的」な要素があるかないかを決めるのに当たってもう一つ重要なのは、人々の価格についての「予想」である。
価格が上がると皆が予想して住宅を買うので、価格が実際に上がり、それを見てさらに価格が上がると皆が予想して住宅を買うので…といった「自己増殖的な価格上昇」が生まれてくる可能性がある。

2009年1月22日木曜日

資本主義は嫌いですか 竹森俊平 日本経済新聞出版社 その6


第Ⅰ部 ゴーン・ウィズ・ア・バブル

2 住宅バブル低金利犯人説を追う

住宅バブルは必ずしも低金利のせいではない

アメリカの住宅バブルの原因について、第一は住宅バブルの主因が、「金利の低下」であるのか、それともそれ以外の要因なのか。第二は、もし住宅バブルの主因が「金利の低下」だとしたら、その「金利の低下」をもたらした主因は連銀の金融政策なのか、それ以外の要因なのか。…どちらも明確な結論は出せない。
エール大学のロバート・シラー曰く、「バブル」の原因として最も重要なのは、「市場に構造変化が生じている」と言う社会認識である。ロバート・シラーは経済現象の背後にある心理的要因を重視する「行動経済学」の立場にある。
(ハワイ、コネティカット、ニューハンプシャー、カリフォルニア、ロードアイランド、マサチューセッツ、ニューヨーク、ニュージャージー)の8州を除いた43州では個人所得の上昇率と平均住宅価格の上昇率がほぼ一致する。

2009年1月21日水曜日

資本主義は嫌いですか 竹森俊平 日本経済新聞出版社 その5



第Ⅰ部 ゴーン・ウィズ・ア・バブル

現代錬金術が招いた悲劇

証券会社が個々の顧客を念頭において開発されたCDOやCDOの二乗という新商品は、マーケットで売却することが極めて困難であることが判明した。最低限のパブリック情報がないからだが、その代わりに格付けが用いられてきた。しかし、不履行が急増するとトリプルAの権威は失墜する。CDOがトリプルAで無いとするならばそれは何なのか?CDOが全然売れなくなる。バブルの形成と崩壊を見ることもできる。アメリカの住宅価格の上昇が金融新商品の拡大を支え、その急落が新商品の価値が暴落する悲惨な結末を招いた。

住宅バブルの景気刺激メカニズム

住宅バブルの景気刺激効果が大きい理由が、「エクイティー・エクストラクション(キャピタルゲインの活用)」アメリカの家計の行動 特に、住宅ローンの積極活用に見出せる。
2つの要因「金利の低下」「住宅価格の上昇」が2001~2005に揃う。
金利が下がっていて、持ち家の価格が上がっているとき、住宅ローンの借り換えをして、さらに持ち家の担保価値が上がった分までプラスアルファを余計に借りる。月々の返済額は同じ。すると余計に借りたぶんは一種のボーナス。消費に使える。実質的に豊かになれる。
借りたほうが得な理由と住宅ローンの履行率は持ち家が住宅ローンの抵当だという点が鍵となる。住宅ローンを不履行した場合、家計が持ち家を債権者に差押さえられる。住宅価格>元利ならば家を売って元利を返済したほうが家計にとっていは得。住宅価格<元利ならば差し押さえられたほうが得。

「砂上の楼閣」が世界を好況に

エクイティー・エクストラクションの仕組みの活用で家計消費が伸びた。それがアメリカの輸入を押し上げた。アメリカへの輸出国の経済も引っ張られて、好況を享受した。
そもそもアメリカの住宅バブルは、何が原因で発生したのか?

2009年1月20日火曜日

資本主義は嫌いですか 竹森俊平 日本経済新聞出版社 その4



第Ⅰ部 ゴーン・ウィズ・ア・バブル

サブプライムの毒性を隠す現代錬金術

サブプライムを組み込んだRMBSの投資適格性を審査した主要格付け機関は、シニア・トランシュに対してトリプルAという最上級の格付けを与えた。トリプルAのお墨付きをもらったシニアの部分は魅力的なので需要がある。それに対してエクイティーやメザニンの部分は、「リスク・アペタイト」の旺盛な投資家であっても持て余すほどの毒性の強いものであるかもしれない。
その場合はこの部分だけ抜き出す。別のABS(抵当証券)と一緒にしたプールをつくる。危険が統計的に相関していないと思われる別種の資産(CMBS、商業不動産担保証券、製造業企業の設備投資ローン)を選び、そういうものをいろいろ混ぜたプールをつくると安全性は劇的に高まる…はずだった。
資産プールを基にして、再びシニア、メザニン、エクイティーというトランシュへの分割がなされ、ストラクチュアード・プロダクト(仕組み債)がつくられる。これを「CDO(コラテララオズド・デッド・オブリゲーション、債務担保証券)」と呼ばれる。CDOをつくる作業過程を「スライシング・アンド・ダイシング」と表現される。

格付け機関が有毒廃棄物にお墨付き

RMBSのリスクの高い部分を滑り込ませてつくったCDOも、シニア・トランシュに対しては、格付け機関がトリプルAを与えていた。CDOのメザニンやエクイティーのトランスに需要があるかどうかが、「滓の滓」「トキシック・ウェースト(有害廃棄物)」と言われる。
そこで再び「スライシング・アンド・ダイシング」の出番です。
さらに、別の抵当証券や金融派生商品などと一緒にプールに投げ込み、トランシュへ分割する。この仕組み債を「CDOスクエアード(CDOの二乗)」を呼ばれる。これのエクイティーの部分は…。
だがこのようにして個々の投資家の「リスク・アペタイト」にマッチした商品をつくることが可能になる。既製服ではなく注文服のようなものだ。

2009年1月19日月曜日

資本主義は嫌いですか 竹森俊平 日本経済新聞出版社 その3


第Ⅰ部 ゴーン・ウィズ・ア・バブル

投資家の「食欲」に合わせた証券

債権のプールができると、それを元利の支払の原資として、「ボンド(債券)」が発行できる。住宅が住宅ローンの「モーゲージ(抵当)」にとられているので「モーゲージ・ボンド(住宅抵当債券)」と呼ばれていた。最近は「レジデンシャル・モーゲージ・バックド・セキュリティー(住宅ローン抵当証券)」略してRMBSと呼ばれている。
元利の支払を均等に分割して同質な証券を発行することも可能だが面白みが無い。投資家の「リスク・アペタイト(リスクに対する食欲の大きさ)」に合わせて証券を発行して販売する。
アーリー・ペイメント・リスクやディフォルト(債務不履行)リスクなどの危険の異なった証券をつくる。

「シニア(最上格)」「メザニン(中二階)」「エクイティー(株式並み)」という3つのトラッシュ(部分)に分ける。ディフォルトによってプール全体としての元利の受け取りの減少率がゼロから次第に上昇していくを考える。ゼロから5%まではエクイティーだけが影響を受け、5%でエクイティーの受け取りがゼロ。5%から20%までは、受け取りに変化が生まれるのはメザニンだけで、20%でメザニンの受け取りもゼロ。それ以上増加した場合は、次第にシニアの受け取りが減らされていく。リスクとリターンのバランスは整えられ、ディフォルトが無かった場合の金利は、シニア、メザニン、エクイティーという順に高くしていく。

サブプライム・ローンの大きな欠陥

RMBSはプライムについて開発された。そしてサブプライムを証券化するのも、原理は変わらないと考えられた。それが諸悪の根源だった。
1、サブプライムの債券不履行率データは歴史が浅く対象期間が短く、住宅価格が上昇傾向にあった時期をメインとすることで、安全性が過大評価された。
2、住宅ローン会社がディフォルトの危険を市場に売却して逃げることができる「オリジネート(住宅ローンの供給)→ディストリビュート(市場で売却)」のモデルのもとでモラル・ハザード(第三者に損害を押し付けられるので、与信が十分に行わない)が起こりやすいこと。

資本主義は嫌いですか 竹森俊平 日本経済新聞出版社 その2


第Ⅰ章 ゴーン・ウィズ・ア・バブル 1錬金術の今昔物語

フランス王立銀行総裁にして「大ペテン師」

「ミシシッピー・バブル」の舞台は1716年にフランスで設立された「ミシシッピー会社」。この会社の実質的支配権を握っていたのは、スコットランド人のジョン・ロウ。
無価値な証券「フランス国債」を人気の証券「ミシシッピー会社の株式」に転換する。これがジョン・ロウの開発した「錬金術」。「ミシシッピー会社」とは、フランスという強大な帝国そのものをM&Aによって 乗っ取るプロジェクトの「コード・ネーム」だったと考えると話が早い。ミシシッピー会社は仏領アメリカにおいて、通商権、開発権を独占し、のちに、中国貿易の権利、インド貿 易の権利、アフリカ貿易の権利を買占めた。さらに、タバコの専売権も貨幣の鋳造権も買い取った。それほどの会社の株式だから人気があり、どんどん株式を売る。その金でフランス国債を買う。逆にフランス国債でミシシッピー会社の株を買うことも認められた。
さらに、「バンク・ロワイアル」フランスの中央銀行の総裁でもあったジョン・ロウは緩和的金融政策をとることでミシシッピー会社の株式が市場で順調に消化されるのを援護した。

忍者ローンと呼ばれるサブプライム・ローン

  「サブプライム・ローン」はそれを供給する金融機関、すなわち住宅ローン業者が、半分は連邦政府の監督下に置かれていないので(半分は州政府の監督を受けている)与信管理のガイドラインに従わないため、審査基準が非常に緩い。
[No Income][No Job][No Asset]でNINJAローンとも呼ばれている。
危険な住宅ローンが罷り通る理由は、政治である。クリントン・ブッシュは低所得者が持ち家を持つことが政治的に有利だと判断した。クリントンの「規制緩和」ブッシュの「オーナーシップ・ソサエティー」とも合致した。

住宅ローンの証券化

住宅を抵当にしたローン債権を基にして証券を発行する。
住宅ローンを証券に転換するに当たり乗り越えるべき課題がある。それは「安全性」を評価すること。
安全性が統計的な期待値と乖離しないために大数の法則が発揮されるように、住宅ローンの束「プール」をつくる。プールも地域的に分散されたほうが安全性が高まる。地域間のローンの不履行率の分布が完全に相関していない限りは、地域を分散したほうが安全性は高まるからだ。しかし、本当の危険を過小評価したものに過ぎなかった。連銀の金利の引き上げや、アメリカ全体の景気が下降したり、アメリカ全体の不動産価格の下落など「全国的要因」によっては意味を持たないからだ。

2009年1月16日金曜日

ボラティリティ(volatility)

金融工学においてボラティリティ(volatility)とは広義には、資産価格の変動の激しさを表すパラメータ。
狭義には株価の幾何ブラウン運動モデル
dSt = S(t)(σdW(t) + μdt).....(1)
におけるσのこと。シグマ。
S(t)が株価を表す場合、時間の単位を1年単位にすると、 通常ボラティリティは 0.15 < σ < 0.60 の範囲にあることが経験的に知られている。

SNSは無料で作れる☆

SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)とは、人と人とのつながりをサポートするWebサービスです。
プロフィールや日記帳、メッセージ交換、コミュニティ作成機能などを使い、メンバー同士がコミュニケーションをとることができます。
つまり、プライベートMIXIのようなものが簡単に立ち上げられます。
会社や友人でSNSを管理するとか、OB客や業者で行うなどやり方はいろいろです。

「SIVとコンデュイットとは何か」

●「SIVとコンデュイットとは何か」(EJ第2396号)
 新聞や雑誌のサブプライム問題の記事を読むと、「SIV」であるとか「コンデュイット」という言葉がよく出てきます。これは何を意味しているのでしょうか。 「SIV」は次の言葉の略です。ストラクチャード・インベストメント・ビークルというのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   SIV = Structured Investment Vehicle
―――――――――――――――――――――――――――――
 SIVというのは、金融機関が設立した投資運用を行う特別目的の法人のことです。日本でいえばノンバンクのようなものと考えればよいでしょう。 
 SIVは、民間МBS(住宅ローン担保証券)やCDO(債務担保証券)という証券を買い取り、それらを担保にしてABCP(資産担保コマーシャルペ-パー)を発行して資金調達をやっていたのです。CPは短期・低利のファイナンスなのです。
 この場合、MBSやCDOは資産となり、ABCPは負債になります。MBSやCDOは償還期限が長期であるのに対してABCPは30~90日の短期なのです。通常は長期金利の方が短期
金利よりも高いので利ざやを稼ぐことができたのです。そのためABCPの満期が来るたびに乗り換え(ロール・オーバー)を繰り返していたのです。
 そういう投資活動をなぜ銀行自身がやらなかったのかというと預金金融機関の場合、投資資産を増やすとそれに見合った自己資本を積み増ししなければならなかったからです。そこでオフバランス(連結対象外)のSIVという銀行の別動部隊を設立し、たとえ損失が出たとしても銀行の決算には何も影響を与えないようにしたのです。
 このような仕組みを作ったのは米銀最大手のシティなのです。
1988年のことですが、これがきっかけとなって、欧米銀行の間で普及したのです。直近の数字によると、欧米系SIVが発行した残高は5000憶ドル、米系SIVで1兆ドルという試算もあります。なお、SIVのバックの銀行のことをスポンサー銀行というのです。
 SIVは世界で約30創設され、その規模は約4000憶ドルともいわれています。そのうちの最大のスポンサーがシティ・グループであり、多い時で約1000憶ドルの残高があったといわれているのです。
 ところが、サブプライム問題でインターバンクで売り買いする債券市場であるABCP市場が崩壊してしまったのです。つまり今回のテーマの冒頭で述べたインターバンク市場の機能不全のことです。そもそもスポンサー銀行は、ABCP市場がロールオーバーできなくなるような事態は想定していなかったので、大きく計算が狂ったのです。
 こうなると、一番怖いのはSIVが流動性(現金)に窮して、MBSやCDOを投げ売りすることによって、市況が一段と悪化することです。そこで、ポールソン米財務長官が音頭を取り、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェースの大手金融機関3社が中心となって、「M-LEC」という基
金を創設しようとしたのです。「M-LEC」とは、次の言葉の頭文字を取ったものであり、「コンデュイット」はこのことをいうのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 M-LEC = Master Liquidity Enhansement Conduit
―――――――――――――――――――――――――――――
 2007年10月15日に「M-LEC」の構想が発表されたのですが、それによると、同基金の規模は800憶~1000憶ドルであり、ABCP市場の回復を狙うことも基金の重要な目標になっているのです。しかし、結局この構想は見送られることになります。『サブプライム問題の正しい考え方』の著者である倉橋透氏と小林正宏氏は、「M-LEC」構想断念の経緯を次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、SIVが流動性に窮して民間MBSやCDOを投げ売りすることにより市況が悪化するのを防ぐため、SIV資産をM-LECが買い取って市場が安定化するまで支えることにより流動性を向上させるというもので、財務省も関与し、90日以内の設立を目指すと発表された。しかしながら、M-LECの買い取る資産の対象や買取価格、M-LEC自身の資金調達など最初から疑問が多かった。12月には日本のメガバンク3行も50憶ドルの融資枠の要請があったものの、断られ、ヨーロッパの銀行も前向きではなく、12月下旬にはついにM-LECの設立は断念された。     ――倉橋透・小林正宏著『サブプライム問題の正しい考え方』/中公新書/1941
―――――――――――――――――――――――――――――
 本当は、世界最大のSIVを抱えて危機に瀕していたシティグループが財務省に頼み込んで、ポールソン財務長官を動かし、M-LECの設立を図ろうとしたのです。
 しかし、決算発表を待っていたかのように実施された格付け機関による怒涛の証券化商品の格下げがあり、10月以降も証券化商品の下落は止まらなかったのです。
 2007年10月17日に米証券会社大手のメリルリンチが決算を発表し、サブプライム関連で79憶ドルの評価損を計上、最終損益は22憶4000万ドルの赤字となったのです。11月3日、ウォールストリート・ジャーナルの電子版は、シティグループのプリンス会長が緊急役員会で辞任すると伝えたのです。証券
化商品の幹部2人も既に退社していたのです。
 しかし、この格付け機関がかなりいい加減なのです。証券化商品の内容を吟味する立場であった大手格付け機関がこれらの商品に高い格付けを与えていたのです。しかし、デフォルトが生ずると一気に下げたのです。[サブプライム不況と日本経済/08]


≪画像および関連情報≫
 ●CDOとは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
社債や貸出債権(ローン)などから構成される資産を担保として発行される資産担保証券の一種で、証券化商品である。担保とする商品が債券または債券類似商品の場合にはCBOと呼ばれるが、貸出債権の場合にはCLOと呼ばれる。CDOは、CBOあるいはCLOのいずれか、またはその双方を包含する商品のことをいう。

SIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)

  SIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)とは、特別目的会社が銀行やファンドから出資を募り、さらにコマーシャルペーパー(CP)で負債を調達して、債務担保証券(CDO)などに投資するプログラム。資金調達の手段というより、証券化商品を積極的に運用する特別ファンドに近い。
 資産側のCDOなどを時価評価し、資本を食いつぶす恐れがある場合には解散トリガーが引かれることもある。そうなればCDOのほか、SIVが投資している企業のCPなども放出され、市場が混乱する可能性がある。

ファンダメンタルズ[ファンダメンタルズ] Fundamentals

経済活動の状況を示す基礎的な要因のことで、経済の基礎的条件と訳されている。
一国経済の基礎的条件は経済指標で示すことができる。
経済成長率、物価上昇率、失業率、財政収支の赤字(黒字)率、経常収支の赤字・黒字額などがそれである。

この用語が一般化したのは、これらの諸指標の各国間の格差が、自国通貨と外貨との交換レートに反映する(短期的にはそうではないが、中・長期的にはファンダメンタルズの良否が為替レートの水準を決める)と考えられるからである。
これまで日本のファンダメンタルズは良好と考えられていたが、失業率の上昇、財政収支の悪化懸念など、高齢化社会を目前にして、様々な構造問題の解決を迫られている。

レポ取引

有価証券貸借取引には担保金等を差し出す有担(有担保)取引と無担取引がありますが、この有担取引のうち、金銭を担保として受入れ、債券を貸出す取引を現金担保レポ(現担レポ)、あるいは単にレポ取引といいます。
米国の買戻し(Repurchase)条件付取引に由来しています。
これはポジションを管理する信託銀行のディーラーの立場から見ると「(有価証券の)貸付取引」になります。
(欧米では売買取引を「レポ取引」と定義しているため、「買戻し条件付き売却取引」となります。)

現先取引とは

現先取引とは、一定期間後に一定の価格で買い戻す(売り戻す)ことをあらかじめ合意の上、債券を売却する(買い入れる)取引を言います。これまで証券会社などの債券保有者には在庫ファイナンスの手段として、また、事業会社、金融機関などの資金の出し手には余資の運用手段として用いられています。

ただ、取引期間中のリスク管理の仕組みや、取引相手がデフォルト(債務不履行)を起こした場合の取り扱いに関する規定が未整備であるといった問題があります。これを解決するために欧米型の手法を盛り込んだ「新現先取引」が2002年4月から導入されました。

この「新現先」は機能的には、ここ数年急拡大を見せた「現担レポ取引」(現金担保の債券貸借取引)の延長上にあり、当面、「現担レポ」と「新現先」が併用されていくと予想されます。

「新現先」の主な特色として、以下が挙げられます。

(1) 旧現先取引の整備・拡充のかたちを取っている。
(2) マージンコール、一括清算条項など現担レポ取引でも採用されているリスク管理方法が採用されている。
(3) 長めの取引を容易にする仕組み(取引対象債券等を取引期間中に差し替える権利)も用意されているなどで、 欧米の取引形態を参考に組み立てられている。

2009年1月13日火曜日

資本主義は嫌いですか 竹森俊平 日本経済新聞出版社


序文
発生確率が予想できる危険を「リスク」といい、それが予想できない危険を「不確実性」という。企業家は「不確実性」の領域に踏み込むことによってのみ「利潤」を得られる。なぜなら確率予想のできる「リスク」だけであるならば、事業についての収入と生産費の期待値が計算できてしまうから。(フランク・ナイト)
「サブプライムローン」が実現した「空前の利潤」は、金融業が踏み込んだ「不確実性」の領域に棲息する計算のできない危険を引き受けることに対する「代償(プレミアム)」にすぎなかった。

2009年1月9日金曜日

樹脂製防火窓偽装

国土交通省
http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000068.html
エクセル シャノン
http://www.excelshanon.co.jp/
トクヤマソーダ
http://www.tokuyama.co.jp/index.html
三協立山アルミ
http://www.sankyotateyama-al.co.jp/news/2009news/sa20090108.html
新日軽
http://www.shinnikkei.co.jp/info/20090109.html

防火窓性能偽装 新日軽

ビル用樹脂サッシ「プララ」は住宅用商品ではないこと、主に北海道、東北で使われているとのこと。
アルミと樹脂の複合商品が住宅用で多く使われていますが、この件とは関係ないとのことです。
以下HPのお詫び文です。

お詫びとお知らせ

防火設備個別認定の不適切な取得および防火認定仕様と異なる仕様の製品を販売いたしました件について
 新日軽株式会社 [ 本社 : 東京都江東区 社長 : 中嶋 豪 ] は、ビル、マンション等の開口部製品として製造・販売しております樹脂製サッシ 「プララ」 の防火設備仕様の製品につきまして、国土交通大臣認定の不適切な取得ならびに認定仕様と異なる製品を販売していたことが、今般判明しました。
 お取引先様およびお施主様をはじめ関係の皆様方に対し、多大なるご迷惑とご心配をおかけすることとなり深くお詫び申し上げます。

 【 製品に関するお問い合わせ窓口 】
    新日軽株式会社 防火設備関係相談窓口
    電話番号 : 0120-66-7181 ( フリーダイヤル )
    受付時間 : 午前 9 : 00 ~午後 5 : 00
      ※ 2 月 28 日までは月曜日から土曜日まで受付 ( 祝日を除く )
        3 月 1 日以降は月曜日から金曜日まで受付 ( 祝日を除く )

サッシ5社防火窓で性能偽装 5500棟、基準満たさず☆

2008(H20)12.27 日本経済新聞
今回は私の身を置く業界での大事件なので、こちらにも掲載いたします。




三協立山アルミと新日軽 建材の共同事業延期

2009(H21)1.8 日経産業新聞

2009年1月8日木曜日

中国のとことんあきれた人たち 湯浅誠 ウェッジ


拝金主義がはびこる中国。官僚制度の隅々まではびこる汚職。

日本人は金儲けが悪いことかのように思っている人が多いと感じていましたが、
中国人は返す気のない金を借りたり、騙したり、殺したり、金に対する執着が強すぎると感じた。

大量のおいしくないスープは我慢すれば飲める。そこにねずみを数匹入れた状態が今の中国だ。
すべての人が悪いわけではない。でも台無しにするには十分な悪が跋扈している。

2009年1月7日水曜日

日暮し(上)(中)(下) 宮部みゆき 講談社文庫





11月に書いた「ぼんくら」の続編。
心の中の小さな闇を掬いとって明らかにする。
罪それ自体は重いものでも、人が必ずしも極悪とは限らない。
でも、必ずしも救われる人ばかりではない。甘くも無い。

かなりメッセージ性の高い文言も出てくるので若干褪める部分もあるけれども、概ね楽しめる作品です。

子供たちの成長と活躍が微笑ましくもあり、嘘くさくもあり。