2008年11月28日金曜日

金融危機の帰趨と今後の展開 武者陵司


1949年生まれ。長野県出身。1973年横浜国立大学卒業後、大和証券に入社。1982年、同証券調査部門独立により大和総研に出向。87年までの間に建設・住宅・窯業・自動車・電機業界を担当。1988年より大和総研アメリカ チーフアナリスト。1993年より大和総研 企業調査第2部長。1997年1月、ドイツ証券に入社。チーフ・ストラテジスト兼株式調査部長。 2005年、ドイツ証券東京支店 副会長兼CIO。

バブル(崩壊)は繁栄の入り口である。

無から有を作る、将来の信用だけで借金をして家を建てる。まさにバブルも資本主義の生み出した発明のひとつであり、信用が無い袖を振らせる。

今、実体経済と市場経済(株・クレジット)は空前の乖離を起こしている。今後どうなるだろう?
①恐慌。市場に吊られて大倒産、大失業へと進む。②資産価格の大反発。実体経済に合わせて市場が回復する。この二通りしか有り得ない。

ちなみに大恐慌の後にはかつてそうであったように、武力行使も含む政治的悲劇が必ず起こる。したがって、何が何でも避けなければならない。

一年前からサブプライムローンの販売価格を見ると完全に債務不履行になっているリスク値(40%~60%)で取引されている。つまり、差し押さえて販売してそれでも残った率程度で。サブプライムローンの延滞率18.68%と抵当差押率(処理進行中)11.82%を合わせても30%程度。

金融機関にはお金が無い。しかし、投資家と企業、中央銀行には現金がある。今後恐慌になるか成長に転ずるかは信用の問題になる。信用が収縮してしまっている状態を信用が拡大していく状態にしなくてはならない。

11月25日のFRBによる合計8000億ドルの新規資金供給は、大きなインパクトをもつ。
とうとう、米国中央銀行が金融機関に対してのみならず、個人や企業に対しても「最後の貸し手」として機能する決意を、明確に示すものであるからである。

米ドルを基軸通貨とした世界を維持するより恐慌を避ける道は無い。
そして、何としても大恐慌を避けねばならない。

今後、東京は技術のハブになり、拡大された資本主義国に中産階級が拡大することで質の高いものにお金をかける時代がくる。拡大した資本主義市場は労働者も増加させた。

グローバル社会は同一のルールで勝負する社会。ひとつの地球として保護主義的政策をとらない前提で国際分業が行われる。しかし、実は、国際分業社会は不公平な社会である。

分業で受け持つ産業のツララの最初の核を持っている地域がその産業を握る。産業は集積するとメリットがある。フォードの故郷、デトロイトの車やスタンフォード大学の近くのシリコンバレーのITなど。農業に特化した地域は現在は不利な状況になっている。

日本は全産業がフルラインナップで持っており、取捨選択できる。付加価値の高い、品質の良い製品を作る技術がある。また、チープレイバーメリットが残っている。日本は安い労働者を使っていかに稼ぐかの知恵をだし、富を増やす時代が来る。

恐慌を避けてしまえば…日本は有利な条件がそろっている。

おすすめの本 「資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす」 竹森俊平 日本経済新聞出版社

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