2008年12月1日月曜日

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 桜庭一樹 富士見書房☆


今回の題材はドメスティック・バイオレンスです。

「なぎさ、なぎさは”ストックホルム症候群”って、聞いたことあるかい?」
「誘拐されたり人質にされた犯罪被害者が陥る心理状態のことなんだ。ストックホルムで実際に起こった事件からその名前がついたんだけどね……」「たとえば誘拐された被害者というものは、自由を奪われて、考えることも取り上げられて、そのまま狭い密室で犯人と何日も過ごすんだ……」「するとね、なぎさ。たとえば宗教団体や自己啓発セミナーや企業の新人研修も同じシステムなのだけれど、奪われた思考のために空っぽになった器に、新しいものがたっぷり隅々まで入ってしまうんだよ。宗教の教義やら新しい自分観やら企業への忠誠心がね……」「誘拐や人質事件の場合は、犯人への同情や忠誠心がそれに当たるんだ。長い間拘束されるほどに、被害者は救出された後までも犯人の味方となり、法廷でも彼らを庇う発言を繰り返す」

少女たちは戦っている。嘘という砂糖菓子の実弾を撃ち、生き残って大人になる為に少女たちは戦っている。

日本のどこにでもある、とても愛おしくなるような田舎の風景の中で。

砂糖菓子でできた弾丸では子供は世界と戦えない。

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